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写植の現場から
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 出版印刷業界の一員として、写植の日常の現場で何が起きているのか、何を追求していったらいいのかを模索し、ネットワークを広げていくための不定期コラムです。
 みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

「ハヤテ」によるマンガ制作の現場から

(株) Station S 出版企画部 岡田隆志

●マンガデジタル編集システム「ハヤテ」

 本サイトを訪問くださった方ならばある程度理解していただいたとは思うのですが、(株)Station Sでは、写研のマンガデジタル編集システム「ハヤテ」を導入し、マンガの集版をさせていただいております。
 幸いなことにこのシステムの評判も上々で、実際にご利用いただいたお客様からは「速い」「きれい」「安い」などのお声をいただきました。この場を借りて関係者の皆様に御礼申し上げます。
 本サイトをまだあまりご覧になっていない方は以下の文をお読みになる前に、デジタルマンガ編集のすすめStation S - コミック本の組版の流れを先に読んでいただけると理解が深まると思います。

●デジタル化によるフローの変化

 【「ハヤテ」でマンガをデジタル編集】のページに従来工程と「ハヤテ」の違いを図にしてありますのでごらんになってみてください(こちらをクリックすれば図が開きます)。
 従来工程のグレーで示した部分(完全版下スキャニング〜面付けまで)が「製版」「集版」と呼ばれる部分で、この工程を「ハヤテ」でデジタル化したことでスピードアップ、コストダウンが図られています。初回のコラムに書きましたが、従来写植→製版→印刷だった工程から製版の工程がほかの部門に吸収されつつあるのです。

 では編集者やマンガ家の人はこのことについてどれくらいこれらの変化を意識していたらいいのかと申しますと、「それほど気にしなくていい」と言ってしまおうかと私自身は考えています。ことマンガに関しては「ハヤテ」を使う限りでは、従来とほぼ同じ感覚で仕事が進められるからです。

 ただ、文字の修正はデジタルにおこないますから、写植文字を「切って」「貼る」作業は編集・写植・製版・印刷のどの工程にも存在しないということだけは知っておいてください。そのメリットを最大限に活かすことが出版社やプリプレス業者とってスピードアップ、コストダウンにつながるのです。

●進行しやすい画稿

 当社は写植による文字版下制作業から発展していったため、文字に関してはエキスパートが揃っています。ただ、画像や図版の処理に関してはノウハウをかなり蓄積したものの、従来製版オペレータが手作業でやっていた細かい作業をデジタルでおこなうためにそれなりに時間がかかることがあるのも事実です。
 編集者やマンガ家の人には工程の違いをそれほど意識することなく従来の感覚でやってほしいと書いてしまいましたが、実はちょっとだけ耳をかたむけてほしいこともあったりします。
 これまでは製版会社、印刷会社の目に見えないサービスのおかげで意識しなくても済んだことをここで明かしてしまおうというわけです。
 社内のマンガ担当者に話を聞いてきました。まさに「現場の生の声」です。

・黄色ペンは使わないで!
 市販のマンガ原稿用紙を見たことのある方ならおわかりでしょうが、マンガ画稿に描かれてある青い色のアタリ(見当をつけるための線)は製版の過程で飛ぶ(消える)ようにできています。
 これはある意味、業界の常識なのですが、なかには黄色い蛍光ペン(や色鉛筆)でアタリを書くマンガ家さん(アシスタント?)もいるそうです。人間の見た目には同じように見えるから大丈夫だと思っても、精度の高いスキャナだと、黄色の線を拾ってゴミとして残ってしまうことがあるそうなので、基本どおり、青色を使ってほしいとのことです。

・墨で書いた画稿
 この場合の「墨」は印刷インクの墨版のことではなくて、毛筆で使う墨のことです。
 特別な効果を狙うために墨を使って表現することは構わないのですが、製版上、墨の原稿の処理には時間(と同時にコストも)がかかるそうなので、その分早く入稿するなどの工夫をしてくれると助かるそうです。

・スクリーントーンの下に、消し忘れた線や消しゴムかすを残さないで!
 これはアナログ時代から製版オペレータ泣かせの画稿でして、スキャンしてからキズをピンセットで除くように取っていくなどの作業をどこかでやらなければなりません。
 デジタルのメリットを活かすためにはこういう工程は省きたいのです。
 締め切りに追われて忙しくて見てられないのも理解できますが、「良い仕上がりは良い原稿から生まれる」というのもまた本当のことなので作家の人にお願いしてほしいのです。

 以上、現場の声としてお伝えしましたが、要約すれば精度の高いスキャナで画稿を読むので、ゴミとして残りそうな要素をなるべく少なくしてほしいということでしょう。修正液も山盛りにすると段差が影になり、ゴミとして残ってしまうんですよ。

●スムーズに進行した入稿形態

 次にスムーズに進行した実例としてふたつのパターンをご紹介したいと思います。
・その1 文字先行型
 本画稿をもらった時点で文字校正が終わっていたとしたら、その時点で編集者の仕事はほぼ終了してしまうパターンです。文字入力、校正は先に済ませてしまいましょうという考え方です。
 ラフ原稿のコピーに指定を入れて渡していただければ「ネーム取り」の必要すらありません。もしネーム取りをしたものがワープロやパソコンで入力してあるものならば、そのデータも渡していただければさらに作業は速く進みます。
 入稿された本画稿を本スキャンして、あらかじめ文字校正が済んだ写植データを吹き出しに配置し、製版の指定を入れたらその時点で責了になりました。

・その2 吹き出し先行型
 担当者がすごく感心していた、ごく最近の例を。
 ラフ画稿には、吹き出しとネームが入っているだけ。絵柄はありませんでした。
 本画稿は吹き出しの形と位置が寸分違わずに入っていて、しかも吹き出しの中のネームが真っ白に消されている(別の原稿用紙から起こしたものかもしれないとのこと)。
 こういう入稿形態はあまりないのですが、こういうラフ原稿の入稿はとてもありがたいそうです。文字校正を進めるラフの状態で、重くなりがちな画像を扱わないで済むこと、本画稿にネームが入っていないことで、吹き出し内でのゴミ発生率は0であることから、作業が驚くほどスムーズに進んだのだそうです。

 これらの例は編集者が製版・印刷の工程を考慮しながらフローを決めてくれた実例ですが、私たち集版業者としてもそういう本には自然に愛着がわいてくるものなのです。
 ラフ画稿で文字を入れて進行することも可能ですが、画像に関しては本画稿からで十分というのが、現場の意見のようです。また新たな意見やさらにいい実例が出てきたら紹介することにしましょう。

●記事ものについて

 マンガの巻末などについてくる、記事ものについての提案です。マンガに限らず雑誌記事についても同様のことがいえます。
 ギリギリの進行で編集せざるを得ないことは私たちも承知していますので、あまり強く要望できることではないと知りつつも……この際だから書いてしまいましょう。

 当社では写植・集版・面付けフイルム出力まで一貫して受け持っていますので、従来のように、「文字は写植屋さん、写真と製版指定は製版屋さん」と別々に順番に指定する必要がなくなりました。
 ですから入稿や指定は、従来のように「文字」「写真・イラスト」「製版」それぞれの指定を別々にする必要はなく、初校時に決まっているのでしたら、1枚のレイアウト指定紙に全部指定してきてくださって構いません。むしろそうしていただきたいのです。
 私どもの現場では、一人のオペレータでその指定のほとんどすべての処理をおこなえますので、ページ組み上げの時点で、使用する写真・図版やキャプション、白ヌキや網かけなどの指定は最初からあったほうがいいのです。

 現実には時間がないので全部揃えるのは難しいかもしれませんが、レイアウトがきちんとしていたらどの段階でも誰も戸惑わなくて済むのに、と思うことはよくあります。
 これは出版の現場からなかなかなくならない課題なのかもしれませんね。

●最後に

 今回は報告・提案・お願いなど、こちらの事情説明が多くなってしまいましたが、きっとみなさんの現場でもお役に立てるのではないかと思います。
 編集、著作、写植、製版、印刷、流通、営業の現場など、印刷物にたずさわる人たちのお役に立てれば幸いです。ぜひともいろんな立場からの感想を残していってください。
 そしてご縁があれば当社のサービスも利用していただきたい、というのを締めの言葉にさせていただきます^^;。

(1998/12/25発表)

Copyright(c) 1998 Takashi Okada, Station S Co., Ltd. All rights reserved
本コラム内容の無断引用、転載を禁止します。

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