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写植の現場から
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 出版印刷業界の一員として、写植の日常の現場で何が起きているのか、何を追求していったらいいのかを模索し、ネットワークを広げていくための不定期コラムです。
 みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

仕事を円滑におこなうためのワークフロー

(株) Station S 出版企画部 岡田隆志

●組版アウトソーシングの例

 まずは2回前のコラムのことで複数の方から質問を受けましたので、ここで短めにコメントしておきたいと思います。
 Quark XPressでレイアウトし、文字は写研の文字を指定する、といった入稿パターンが徐々に増えてきたと書きました。この入稿スタイルでスムーズにいった例をご紹介します。

 デザイナーはラフな文字組レイアウトと、写真のアタリを粗画像で貼り込み、手持ちのプリンタで印字したものを見本とし、その紙に書体や級数の指定(もちろん写研の書体です)を赤字で書き入れ、それをレイアウト指定紙として入稿されました。全ページ同じ方法で仕上がり見本として入稿される例もあります。
 文字はテキストデータをフロッピーディスク(もしくは電子メールの添付データ)で別途入稿されます。プリントアウトされたものに赤字が入っている場合には、当社で赤字を修正しながら写研の編集機に流しやすいようにMS-DOSマシン上(あるいはWindowsマシン上)で加工していきます。
 いっぽうで指定紙に書き込まれた指定に基づき、組版編集機で流し込みやすいように文字枠や画像枠を作り込んでいきます。画像の取り込みと文字の前処理が終われば、流しながら体裁を整えて初校出しが完了というわけです。

 この流れのメリットは、デザイナーが本来のデザインだけをすればいいことでしょう。組版に関しては基本ルールの指定さえすれば、そのとおりに組むことは当社にとってはたやすいことです。編集者は全体の進行を見守るとともに、文字の校正や細部のチェックをすれば、本来の編集者としての仕事だけで済みます。
 この流れは、組版アウトソーシングのひとつの提案でもあります。文字組版に本当にこだわるのなら、複雑なテクニックを使ってDTP内製化する時間と手間を考えたら、私どものような組版・製版専門業者に頼むのもひとつの手ではないかという提案です。面付フイルム出力までカバーできるところが支持されている理由のひとつかもしれません。
 文字がアウトライン化がされていなかったり、製版処理がされていない図版データが入稿されることもあります。できることなら再編集が必要のない完全データが望ましいのですが、現実には赤字がいろいろ入ります。写研の文字を使うと決めたら、文字はすべて写研の文字で、と潔く決断していただいたほうが、後々の修正のことを考えると経験上、スムーズに仕事が運ぶようです。一から作らせてもらったほうが事故の少ないクリーンでスピーディな組版ができるからです。

●事故を起こさないために

 話がちょうど事故の話になりました。
 印刷物になるまでの工程で、様々なミス、トラブル、エラーなどの事故がつきものですが、これらを少しでもなくすため、あらゆる工程で事故防止、および品質管理をしていかなければなりません。それはみなさんの職場でも同じことでしょう。
 いったん事故が発生すると、お金や仕事を失うばかりか、それまで積み上げてきた信用・信頼を急激に失いますから、これほど恐ろしいことはありません。ちょっとした手順のミスが大事故に結びつくような危険な仕事の進め方をしていると、必ずどこかで事故につながります。
 みなさんの職場でも同じだと思いますが、事故原因のほとんどは、人的ミスによる事故です。それをいかになくしていくかを常に考えていかなければならないし、品質管理方法も常時見直していく必要があると当社では考えています。
 いかに事故をなくしていくかということは、いかに事故が起きにくい手順で仕事をするかです。また、人間のすることは必ずミスが起きるのだということを前提とし、そのミスをいかに拾い上げてフォローしていくかを考えることも必要となるでしょう。
 事故の起きないワークフローとは企業の品質そのものを表しているといってもいいほど重要な要素なのだと最近つくづく感じます。

●事故につながらない仕事の進め方

 それでは、事故になりにくい仕事の進め方について考えてみましょう。
 まず単純なことから挙げていくと、仕事を標準化すること、つまりマニュアル化することです。それはきっとどこの企業でもやっていることでしょう。アルバイトでもしっかりとしたマニュアルがあれば、立派な仕事ができますし、そういった仕事をマネージメントしていかなければ品質が落ちてしまいます。
 標準化とは、難しい仕事を簡単な仕事に変えていくことでもあります。DTP作業という、高度で複雑な作業もひとつひとつ分解すれば、単純な作業の積み重ねです。その作業をさらに未経験者にもできるような簡単な仕事に変えていきます。その手順ひとつひとつが、ミスの起きにくい、大事故につながらないようにしていくことはいうまでもありません。

 入稿伝票の書き方から、仕事の分配方法、次工程への受け渡し形態、データ管理方法まで、実際の作業にかかる前にもやり方ひとつでずいぶんミスが減ります。
 実際のDTP作業を始めるにあたっても、データフォルダの作り方に始まり、データの名前のつけ方やクリーンな文書データの作り方、二重データの防止策、安全なバックアップ方法など考慮すべきことがたくさんあります。オペレータが2〜3人しかいないのでしたら、その場で聞きあったり、専任制をとれば事なく運ぶでしょうが、当社のような中規模の生産ラインを持っていると、初校を作った人が必ずしも再校、責了まで担当するとは限りません。むしろそのほうが稀です。
 ですから、初校の文書データを作る段階で、校了までに起こりうる赤字を想定しながら、事故が起きにくい文書データを作る必要があります。そして、トリッキーな裏技の使用はできるだけ避けなければなりません。そのオペレータにしか理解・操作できないような文書の作り方は当社では好まれません。特別なオペレータの負担が増えるばかりではなく、事故の起きる危険性が増すことがわかっているからです。

 出力後の検品・検版についても、工夫しだいで未経験者でもできる仕事になります。事故が起きにくいデータの作り方、修正、出力のあとは、事故を発見しやすい検版の方法でしょう。検版システムは事故を未然に防ぐための最後の砦なので、検版品質向上のために、失敗の経験を日常の仕事にフィードバックしつづけています。

●処理難易度

 仕事を実際にするのはオペレータなのですが、入ってきた仕事の処理難易度について以前はオペレータしかわかりませんでした。しかし、本来、これはマネージャーや営業担当者が知っていなければならないことでしょう。納期や価格をシビアに考えるのであれば、、仕事の処理難易度をまず知っていないと話になりません。フォントのことや画像の処理、修正の面倒さなどの詳しい知識がなくても、仕事の見積もりを依頼された時点で、どの程度の手間と時間がかかるのかを推測し、現場のオペレータと同程度の予測が立てられるのならば、きっと優秀な営業といえましょう。
 作業部署によってそれぞれの立場や意見もあるでしょうが、最終的にはお客さんに満足してもらえるものを作って納品することには変わりません。私は仕事柄、どうしてもオペレータ寄りの意見に耳を傾けがちですが、一オペレータの立場とはいえ、お客さんに満足してもらうために必要なサービスについて、発注する側に立って考えることも必要になってきたのだと感じます。

●DTPは非工業的?

 この見出しを見てぎょっとされた方もいらっしゃると思います。
 印刷のプリプレス工程を一台のパーソナルコンピュータですべておこなうことができるようになったDTPシステムは、従来のアナログ時代のワークフローを根底から変えていきました。ある面ではコストダウンをはかれましたが、ある面では品質の低下や、一部の知能集約労働者の仕事を過酷にしました。
 労働時間を減らし、コストを減らして生産性を上げるためにDTPを導入し、それが成功していれば問題ないのですが、はたして本当にそうなのかどうか疑問に思うことがあります。「内容、品質が一定に保たれた面付け済み製版フイルムを工業的に生産する」という意味において、みなさんの制作現場のプリプレス・ワークフローは正常に機能していますでしょうか?
 当社は写研のシステムを採用しているおかげで、一部のオペレータだけが徹夜残業するといったようなことにはなっていませんので、少なくともその点においては生産効率は下がっていません。専用システムは汎用システムに比べ「工業的」であると感じる場面が多くなりました。ふだんは日常の業務に追われて工業生産性を考える余裕はないのですが、いろんな立場の人に会い、いろんな意見を聞いてみると、手前みそではありますが、当社で採用しているシステムやワークフローはまんざら悪くないと思うようになってきました。

(2000/5/30発表)

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