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写植の現場から
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 出版印刷業界の一員として、写植の日常の現場で何が起きているのか、何を追求していったらいいのかを模索し、ネットワークを広げていくための不定期コラムです。
 みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

写研DTPのワークフロー

(株) Station S 出版企画部 岡田隆志

 日常業務が忙しくてしばらく放置したら半年以上過ぎてしまいました。
 この半年でいろんなことがありました。
 99年の春から都の技術専門校で印刷関連業に転職を考えている人(ほとんどが初心者です)を相手にWindows DTPや組版、レイアウトに関する講師をさせていただくことになりました。
 夏には事業所が移転することになり、移転後の対応や急増した仕事の処理などで残業が増え、日々考えることをコラムの形で書かせていただく時間すらまったくない状況がずっと続いています。
 先日、このコラムに対して励ましのメールをいただいたので、少しは役に立っているのかもしれないと思い、最近、写研のプリプレスシステムを使って感じたことなどを少しだけ述べてみたいと思います。

●DTPはワークフローであり、スキルは数である

 組版・製版などのプリプレス作業をMacintoshコンピュータで行うメリットははかりしれないものがあります。特に、一人、もしくは少人数でおこなう企画編集プロダクションにとってこのワークフローは最適でしょう。
 ところが、得意分野を伸ばし、どこかの部分を特化し、規模を拡大し、いかに品質を保ったまま生産性を上げるかといった問題に直面したときに、小規模のやっつけ仕事ばかりでは対応しきれなくなります。
 一人でなにもかもできてしまう人にとって、DTP作業はそれほど難しいものではなく、些細な工程の組み合わせにしかすぎないのですが、それぞれの工程を分担し、人にやってもらうとなると、ひとことでは説明しきれないノウハウがあったりします。
 そのノウハウは、試行錯誤の繰り返しによる「数」だけ蓄積されていきますが、そのノウハウをいかに標準化し、ミスがないように人に伝えていくかが大変なのです。
 DTPはワークフローであり、スキルは数なのです。
 工程の標準化、それこそがチームでDTP作業をするときのテーマとなります。品質の高いものを同じ手順で高速に作り上げていくための努力を当社では毎日しています。みなさんの職場でもきっと同じことをやっていらっしゃることでしょう。

●プロの仕事に応える

 最近、受けた仕事のなかで、感心した例をご紹介します。
 レイアウト指定紙に、文字の指定、位置の指定、写真のトリミングの指定、製版の指定まで大変細かく、正確に書き込まれて入稿されました。
 デザイナーと編集の方がしっかりしているからだと思いますが、その美しいまでの指定にプロの心意気を感じ、それに精一杯応えられるように私たちも組版させていただきました。
 デザイナーはQuark XPressでレイアウトし、レイアウト見本をプリントアウトしたものに、書体や級数や組版・製版の指定などが細かく赤字で書き込まれていました。最近、こういう形での入稿が多くなりました。写研の文字で組むのでしたら、こういう形での入稿が実はいちばん早く正確に組み上げられます。
 データをいただいて、「添付データ参照」とあるだけですと、データを開き、文字情報、位置情報や、貼り込んだ画像やリンクなどをチェックしてから、組版担当者にレイアウト指定を引き継ぐという工程に大変時間がかかります。生意気いって申し訳ありませんが、この工程は、本来はデザイナーのお仕事ですので、手抜きをされないようにしていただきたいです。
 さて、その本は、スケジュールの遅れもなく、面付け出力して納品し、すでに1冊の本になりました。手離れがいい本はあまり記憶に残らないものですが、編集者の進行管理能力が高く、編集とデザインの境界線が明確だったのが強く印象に残りました。本作りとは本来、こういうものだということを再認識させられました。プロの仕事に対して、私たちもプロの仕事でお応えする、爽快感あふれる仕事でした。きっとこの先の工程もスムーズにいったのではないでしょうか。

●写研独自のワークフロー

 写研のプリプレスシステム独自のワークフローはあるのだろうか、と考えてみると、Macintoshで行われるプリプレスとそれほど変わるわけではありません。いちばんの違いは、ページ記述言語がPostScriptではないということでしょう。インチ換算やPostScriptエラーとは無縁の世界です。
 スキャナで取り込んだり、MOなどで入稿された画像データは、写研の内部データに変換します。文字データや印字データなどもすべて写研独自のフォーマットで構築されていますから、ハード・ソフト面でのエラーが極めて少ないです。「爆弾マークが出て途中まで作ったデータが壊れた」なんてことはよほどのことがないと起こりません。そこがいちばんの強みでしょう。
 モノクロ編集機「GRAF」は写研の組版プログラム「SAPCOL」を内蔵し、強力かつ高度な組版・製版をし、ページを高速に仕上げます。ワンドラッグで枠図形の形状変更ができないところが特徴で、ちょっとしたマウスの誤操作で図形を移動・変更してしまうことがないところがプロ仕様といえましょう。
 カラー編集製版機「SAMPRAS」は高度な編集機能を備え、写研フォントをリアルフォントで表示しますから、真のWYSIWYG編集ができるところがポイントです。マンガデジタル編集システム「ハヤテ」ではこのSAMPRAS上で編集をおこないます。
 それぞれの編集機で制作したページは、印字データとしてサーバーに送り、サーバー上にある面付けソフトによってデジタル面付けし、そのままイメージセッターに送付して完了です。
 IGAS'99ではCIP3対応の印刷機やCTPセッターの展示が目立ちましたが、近い将来、写研のデータもCIP3を搭載し、PostScriptデータとシームレスなやりとりが行われるのではないかと想像しています。

●QXでレイアウト、文字は写研の文字で

 縦組みの組版に弱い欧米産のレイアウトソフトの限界が次第に認知されてきたのか、最近、レイアウト指定はQuarkで、フォントは写研で、という入稿パターンが次第に増えてきました。レイアウトソフトとして印刷・デザイン業界に浸透したQuark XPressですが、Ver3.3Jでいったん完成し、その弱い部分を補うためにいろんな使われ方をされているのでしょう。Quarkを「レイアウト指定用ソフト」として使うのにはちょっともったいない気もしますが、デザイナーの意図を素早く形にするためにこれからもQuarkは使われていくことでしょう。
 扉などはIllustratorで作り、データ入稿される場合もありますが、モリサワのNEW CIDフォントの浸透度は低く、アウトライン化されていないモリサワの書体は写研の書体に置き換えることで対応しています。
 それぞれのプロたちが、それぞれの役割を分業によって果たしていく、という流れはDTP的には逆行しているようにも見えますが、高品質なものを速く大量に生産するには、分業もまた必要なときがあるのです。
 そんなことを考えながら、不況のなか、次々と入ってくる仕事を、いかに社内分業し、それぞれの作業をいかに標準化していくかに奔走する毎日を送っています。

(1999/12/27発表)

Copyright(c) 1999 Takashi Okada, Station S Co., Ltd. All rights reserved
本コラム内容の無断引用、転載を禁止します。

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